JPHACKSから未踏スーパークリエイターへ!

名古屋工業大学大学院 工学研究科 工学専攻 情報工学系プログラム卒業

竹味 和輝

まえがき

JPHACKS2022で、Best Hack Award及びBest Audience Awardに選ばれた竹味 和輝さんにインタビューを行いました。

竹味さんのチームが開発したのは、「TDL/TDS AIナビ」。
ディズニーに詳しくなくても待ち時間を少なく回れるルート提案アプリです。

JPHACKSで生まれたこのプロダクトは、その後も開発が続けられ、累計35,000以上ダウンロードされています。

今回は、そんな素晴らしいアプリを開発した竹味さんに、JPHACKS参加のきっかけ、開発で大切にしていることやその後の挑戦を聞いたので、是非ご覧ください!

JPHACKSに参加したきっかけ

元々はTECHCAFEという、エンジニア・デザイナーを目指す学生が集まるコミュニティスペースで仲間を作り、開発をしていました。

そこには、なんとなくプログラミングに興味がある学生が集まっており、情報交換をしたり、雑談をしたりと、ゆるやかな雰囲気がありました。
全員が開発経験を積んでいたわけではありませんでしたが、「何か作ってみたい」「ハッカソンに出てみたい」という興味やモチベーションを持ったメンバーが自然と集まっていました。

当時のチームは、専門分野も大学も学年も違うメンバーでしたが、プロのエンジニアが集まっていたわけではありません。文系で、ほとんどプログラミングに触れたことがないメンバーもいました。それでも、メンバー全員のモチベーションは高く、「まずは挑戦してみよう」という気持ちで、さまざまなハッカソンに参加していました。

その中で出会ったのが、JPHACKSでした。

2021年にもJPHACKSに参加し、決勝戦であるAward Dayまで進出しました。しかし、その年は優勝することができませんでした。

その経験を経て、翌年のJPHACKS2022では「やるべきことは全部やろう」と決めて再挑戦。結果として、Best Hack AwardとBest Audience Awardを受賞し、リベンジを果たすことができました。

開発のこだわり

僕たちがJPHACKSで開発したのは、「TDL/TDS AIナビ」というアプリです。

ディズニーに詳しくない人でも、待ち時間をできるだけ少なくしながら、効率よくアトラクションを回れるルートを提案することを目指しました。

JPHACKSでは、予選のHack Dayを経て決勝に残るプロダクトが決まり、決勝戦のAward Dayの前に、改善期間が3週間程度あります。

Hack Dayの時点では、まず「このアプリは面白そう」「使ってみたい」と思ってもらうことを重視しました。一方で、Award Dayまでの改善期間では、実際に使えるプロダクトとして中身を作り込むことに注力しました。

特に大変だったのは、待ち時間予測の精度向上です。Hack Dayの段階では、前週の待ち時間データを使ってルートを提案していましたが、それだけでは精度に限界がありました。そこで、機械学習のモデルを作り、より精度高く待ち時間を予測しようと考えました。

ただ、モデルを作ればすぐにうまくいくわけではありません。Award Day直前まで予測精度はなかなか上がらず、かなり苦戦しました。それでも試行錯誤を重ね、直前になってようやく精度が改善し、実際に使える手応えが出てきました。

そしてAward Dayの前日、僕たちは東京ディズニーリゾートで実際に検証を行いました。

アプリを使うチームと使わないチームに分かれ、同じ8つのアトラクションを回って比較したところ、アプリを使ったチームの方が、2時間41分早くすべてのアトラクションに乗り終えることができました。

この検証では、一発勝負の緊張感もありました。
今日の成果が明日の発表を左右する、というプレッシャーの中で、無事にアプリが動いた時は本当に安心しました。

机上の空論で終わらせるのではなく、実際に使い、価値を確かめること。そこは自分たちが特にこだわったポイントです。

もちろん、実際に使ってみると、想定していなかったバグもたくさん起きました。アプリを動かしながら、ありとあらゆる不具合に出会い、そのたびに地道に修正していきました。ディズニーの開園待ちの時間までデバッグを続けていたことも、今では印象に残っています。

また、ルートを提案するだけでは、ユーザーの課題を完全には解決できないことにも気づきました。

たとえば、予測していた待ち時間が実際とズレた場合、最初に立てたルート通りに進んでも、最適な回り方ではなくなってしまいます。そこで、待ち時間の変化に応じて、その後のルートも更新できるようにしました。

ハッカソンのプロダクトとしては、そこまで作り込むのは少し過剰だったかもしれません。しかし、実際にユーザーが使うことを考えると、最初のプランがズレたときにどう修正できるかまで含めて、課題解決には必要だと感じました。

僕にとってハッカソンで大切なのは、単にアイデアを見せることではなく、実際に使えるものを作り、その価値を自分たちで確かめることです。作って終わりではなく、使って、気づいて、改善する。そのサイクルをどれだけ回せるかが、プロダクトの完成度を大きく左右すると思っています。

経験から見えた、開発の進め方

ハッカソンや未踏など、さまざまな経験をさせていただく中で感じたのは、ハッカソンで開発する時と、実際にアプリをリリースする時では、重要視すべきことが少し違うということです。

ハッカソンでは、短期間で「いかに使いたいと思ってもらえるか」がとても重要です。

もちろん中身も大切ですが、それ以上に、プロダクトの魅力を限られた時間の中で伝えきることが求められます。どんな課題を解決するのか、なぜ面白いのか、なぜ使ってみたいと思えるのか。そこを明確に伝えることが、評価につながると感じています。

一方で、実際にアプリをリリースするとなると、見せ方だけでは通用しません。

「使ってみたい」と思ってもらえる期待値を作ったからこそ、その期待に応えられるだけの中身を作り込む必要があります。どうすればユーザーが本当に使いやすいと感じるのか、どんな情報があると嬉しいのか、どこで困るのか。そうしたユーザー目線での開発が、より重要になります。

ハッカソンでは魅力を伝える力が重要で、リリース後はその魅力に見合う価値を届け続けることが重要になる。両方を経験したことで、プロダクト開発における見せ方と作り込みのバランスを学ぶことができました。

JPHACKSから未踏への挑戦

TDL/TDS AIナビを開発した後、教授から未踏を紹介され、応募・参加してみました。
以前から未踏の存在は知っていたものの、自分にとっては「雲の上の存在」だと感じていたので、教授からのきっかけとチームメンバーの後押しがなければ応募していなかったと思います。

みなさん、JPHACKSと未踏がかなり相性いいものって知ってますか?

僕たちの場合、JPHACKSでプロトタイプを作り、その後12月から1月にかけて、バグ修正やハッカソン期間中には作りきれなかった部分の開発を継続しました。

さらに、未踏の提案書を書く過程で、自分たちが本当にやりたいことや、今後アプリをどのように発展させていきたいのかを整理することができました。

そして未踏では、資金面の支援やメンタリングを受けながら、1年間にわたってさらに開発を進めることができました。JPHACKSで生まれたプロトタイプを、より本格的なプロダクトへと育てていく上で、とても大きな機会になりました。

実際に私が採択された2023年度未踏ITの採択者のうち7人(3プロジェクト)はJPHACKS出身者です。

それだけでもありません。
審査員・組織委員会の方もこんなにも未踏の方がいます!


・組織委員会 副委員長: 竹内 郁雄さん (未踏 統括プロジェクトマネージャー)
・特別審査委員: 登 大遊 さん (未踏2003 スーパークリエイタ)
・特別審査委員: 小室 真紀 さん (未踏ジュニアメンター)
・審査委員: 神武 里奈 さん (未踏2014 スパクリ, 未踏ジュニア メンター)

JPHACKSで挑戦し、そこで生まれたプロダクトをさらに育てる。その先に、未踏のような次のステージがあることを、自分自身の経験を通して実感しました。

運営からのメッセージ

今回のインタビューで特に印象的だったのは、竹味さんの「課題解決へのこだわり」の深さです。

「課題を解決するプロダクトを作る」という言葉は、プロダクト開発においてよく使われます。しかし、竹味さんたちはそれを言葉だけで終わらせず、実際にユーザーが使う場面まで踏み込み、検証と改善を重ねていました。

作って終わりではなく、実際に使う。使ってみて分かったことをもとに、また改善する。そのサイクルを徹底的に回す姿勢こそが、価値を高め、JPHACKSでの受賞や未踏への挑戦にもつながっていったのだと感じます。

生成AIの登場によって、ものを作るハードルは大きく下がっています。だからこそ、ユーザーが本当に何を求めているのか、その課題をどのように、どれくらい深く解決するのかを考え抜く力は、これからますます重要になるはずです。

竹味さんの挑戦は、これからJPHACKSに参加する学生にとっても、「作ること」と「使われること」の間にある大切な視点を教えてくれる事例だと思います。

未来の参加者へ

JPHACKSはフリーテーマなので、
身近な課題の解決や、自分の本当に作りたいものを作るチャンスです!
技術力に特化した人が勝つというよりも、
自分の好きなことや身近な課題をどれだけ深く突き詰められるかが
勝負の鍵になります。

また、マネタイズなどを過度に考慮せず、
好きなものを作って評価されるという機会は、
ハッカソンだからこそ、そして学生だからこそできる特権だと思います。

JPHACKSは、プロダクト開発の入り口としても出口としても、
工夫次第でどうとでも活用できる場になります。

ぜひ自分の情熱をぶつけて、挑戦してみてください!