つくる人同士のつながりは、アートのように人を幸せにしていく──未来の衣服文化をハックした学生のその後

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このレポート記事の概要

UT-HACKsが開発した、“金属を身にまとうという新たな文化”を表現するためのパーカー「Metalic Parka 2015 (KIRU-METAL)」は、「JPHACKS 2015」にてDMM.comラボ賞を獲得した…

JPHACKS出場者
鈴木 絵里香 (写真左・東京造形大学)
梶原 侑馬 (写真右・東京大学)
※参加時点での学校・学年です。
開発プロダクト

Metalic Parka 2015 (KIRU-METAL)

Metalic Parka 2015(メタリックパーカ)は、「着るメタル」という世界観を表すためのプロダクトです。薄くても強度が高く、保温性に優れている上に「導電性」を持つ金属は衣服と相性がいいと考え、アルミ(ホイル)でプロトタイプを制作しました。

参加会場:
東京会場
使用技術:
Arduino, TwitterAPI

UT-HACKsが開発した、“金属を身にまとうという新たな文化”を表現するためのパーカー「Metalic Parka 2015 (KIRU-METAL)」は、「JPHACKS 2015」にてDMM.comラボ賞を獲得した。

東京造形大学を卒業後、デザイン会社で働きながらアーティストを目指す鈴木さん、東京大学在学中の梶原くんに、改めてJPHACKSで得たものや感じたことを振り返ってもらった。

きっかけは「金属を身にまとう未来を予感させたい」という想い

──東京会場での開発中も、パーカーにアルミホイルを貼り付ける光景などが、参加者たちの注目を集めていました。そもそも“メタリックパーカー”を開発したきっかけは何だったんでしょう?

鈴木:
きっかけは単純に、私が金属大好きだったことです(笑)。普段の生活の中で金属を身にまとえるような未来が来たらいいな、と思っているので、前段階のアウトプットとしてパーカーを開発しました。

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──金属は電気を通す性質を持つから、衣服に使うことで人間の身体そのものを入出力のデバイスにできますよね。すごい発想だと思います。

鈴木:
でも実は、アイデアが出たのは本番前日のことだったんです。

──前日。結構ギリギリですね。

梶原:
僕は駒場祭の準備でものすごく忙しかったので、気がついたら企画が固まってないまま「来週、JPHACKSじゃん」って。

鈴木:
追い込まれた結果、「こうなったら、パッと思いついたものを全力で開発していこう!」という流れになりました。

──工作用具など、かなり準備してきたと思ってたんですが、意外と勢いでつくってたんですね(笑)。

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鈴木:
期待通りというか、会場はすごく熱気があったので、2日間集中して開発するにはいい雰囲気だったと思います。

梶原:
他の参加者のコードを読んだら「すごい!」と思うことが多くて、HackDayの最中もかなり刺激を受けました。

──2015年の東京会場は、地方に比べると本気で賞を狙っているようなアツい学生が多かったと言われています。

梶原:
協賛企業も28社あって、スポンサー賞だけでもかなりの数でしたし、現地では改めて「すごいところに来たんだな…」と感じました(笑)。

──とはいえ、そうやって追い込まれながらも2日間でプロトタイプをしっかり開発して、DMM.comラボ賞に選ばれましたよね。HackDayが終わった時点で、賞を取る自信はありましたか?

梶原:
取れるとしたらDMM賞か特別賞かだと思ってたんですけど…、完成度でいうと心配だったので、確信はなかったです。

鈴木:
私たちより完成度が高い作品は他にもあったと思います。ただ、私は「賞は取れないかな…」というネガティブな気持ちではなくて、「全力を出せたし、いけるんじゃない?」とは思ってました。なんとなく、大丈夫かなって。

梶原:
僕はFinalラウンド当日にバイトがあって、会場にいなかったんですけど、LINEで報告を受けたときは驚きました(笑)。

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チームでの集中開発を通して、“個の力”の大切さに気づいた

──メンバーの間でも肌感には差があったんですね。今振り返ると、勝因は何だったと思いますか?

梶原:
やっぱりチームでの開発なので、デザイナー、ハード担当、ソフト担当と、それぞれの役割に集中できたことが良かったかなと思います。

──しっかり各自の役割を果たせたことで、2日間である程度のものができたと。

鈴木:
でも、私はデザイナーとはいえ、エンジニアの二人に技術的な部分を任せてしまったことを申し訳なく思っています。

JPHACKSでは、チームで目指すところと、自分ができることの間に差があると感じました。だから、今はチームで何かをつくっていくよりはまず個人の力を高めたほうがいいと思って、卒業制作や、就職後の活動を通して“個の力”を意識するようになりました。

梶原:
やっぱり、実際にプロダクトをつくってみると、気づくことも多いですよね。

──今後のキャリアを考える上で、一つの転機になったんですね。

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(金属への愛がきらめいている、学生時代の作品などのポートフォリオ)

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鈴木:
今は新卒入社した会社で営業の仕事をやっているんですけど、通勤時間が長いので、電車の中で絵などを描いています。

──これを電車の中で!? いや、電車で前に座ってる子がこれ書いてたら二度見しますよ(笑)。

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鈴木:
最初はよく見られるんですけど、だんだん気にされなくなるので集中できます(笑)。

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──めちゃくちゃ努力されてますね…。

鈴木:
世界一のアーティストを目指していますから。

──JAPANをHACKするだけじゃないんですね。

鈴木:
昔、アーティストの方のもとで働いていたことがあったので、お金の使い方だったり、アートを仕事にするための戦略は学ばせていただきました。

今はまだ仕事にはできてないですけど、お金に臆病にならずにちゃんと向き合っていって、いずれは一人の“アーティスト”としてお金を稼げるようになりたいです。

──この手帳、最初のページからものすごい力強さを感じます。

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鈴木:
やっぱり、個の力を磨いて「鈴木絵里香」として大きくなりたいんです。後ろにこんな有名な方がついてくださっているとか、「第二の○○」みたいに売り出したいとは思っていません。

──鈴木絵里香という個人にしかない才能を磨きあげてほしいです。

“つくる人たちのコミュニティ”が盛り上がれば、人はもっと幸せになれる

──さて、鈴木さんはストイックに“個の力”を高める努力をされているわけですが、梶原くんは何か得たものや、感じたことはありましたか?

梶原:
JPHACKSが終わってからも、他のコミュニティで「僕も出てたよ」という話がきっかけになって、新しいつながりが生まれることがありました。

僕は、自分でものをつくることはもちろん好きですけど、「どんなAPI叩いてるの?」みたいな、つくる人ならではのコミュニケーションも好きなので、今はつくる人たちのコミュニティをもっと盛り上げていきたいと思っています。

──鈴木さんとは対照的に、今は“コミュニティ”に目が向いているんですね。

梶原:
つくる人たちのコミュニティ自体が、一つの“アート”だと思うんです。人はいろんな道具を通じて発展してきたので、つくる人のコミュニティを盛り上げることで人を幸せにしたいです。

たとえば、僕はもともとプロダクト開発に興味があったわけではないんですけど、デジタルアートに触れたことがきっかけで、エンジニアやデザイナーという仕事に興味を持ったんです。

──アートや新しいプロダクトは、人に大きな影響を与える可能性がありますよね。二人にとってのJPHACKSも、人々に対して「金属×衣服」という新しい可能性を提示したり、自分自身の意識にも刺激があったりという点で、一種のアートですよね。

梶原:
開発イベントの2日間でいきなりすごいものがつくれるわけではないけど、参加したことで得られる経験は大きいですよね。

チームで集中してものをつくる経験、周囲と競い合うという経験、コミュニティから生まれるつくる人同士のつながりをきっかけとして、イノベーションが起きるんじゃないかと思っています。

──JPHACKSは「イノベーションのきっかけが生まれるコミュニティ」と定義しているので、参加者にそう言ってもらえるとありがたいです。

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鈴木:
ただ、参加するときにはあまり難しく考えず、好きな仲間と一緒に好きなものをつくる時間を楽しむことが大切だと思います。

──賞を取れたことも、新たな気づきを得られたことも、あらかじめ予想できたわけではないですしね。

鈴木:
だから、今後参加される方にメッセージを贈るとしたら…、もし本番直前まで他の予定で忙しかったとしても、HackDay本番を徹夜で乗り切れるだけの精神力と仲間を持って参加してほしいです(笑)。

──振り返ると、二人にとっては「こうなったら、パッと思いついたものを全力で開発していこう!」という最初の一歩が大きかったんですよね。今後も、その勢いのまま頑張ってください!

Interview: Jumpei Yamane
Text: Hiroaki Takahashi

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